
この記事を書いた人
八木 直生 (Naoki Yagi)
1991年生まれ、群馬県出身。元プロサッカー選手・サッカー指導者(ポジション:ゴールキーパー)。
199cmという日本人離れした長身を武器に、鹿島アントラーズユースを経て2010年にトップチームへ昇格。U-18日本代表候補にも選出。
2013年に現役引退後は指導者の道へ進み、鹿島アントラーズの育成組織コーチなどを歴任。自身のゴールキーパーとしてのプレー経験と専門知識を活かし、次世代の育成やサッカーの魅力発信に尽力している。
GKは常に考え続けるポジション
90分間休まず状況を読み続ける頭の使い方
周りのポジションに比べるとボールに触る回数がそれほど多くないのがGKです。ボールを触っていない時間が長いからこそ、それ以外の時間で相手チームの戦い方や選手一人ひとりの特徴を捉えて味方に伝えたり、自分自身の準備をより完璧にします。
特に相手チームがどこを狙っていてチャンスを作りたいかを読み取ることが重要です。足の速い選手が相手にいた場合、そのマークをする選手のポジショニングに対して常に声をかけ続けます。誤ったポジションをとってしまうと一瞬でピンチにつながってしまうからです。
オフサイドラインを常に高く保つことや、相手が良い状況であればあえて深くラインを設定して背後のケアをすることもあります。また試合をコントロールすることに長けている選手が相手にいる場合などは、味方にマンツーマン気味にプレスをかけさせて自由度をなくす、もしくは二人で守備の管理を徹底させるなど、相手側の起点になりそうな選手を徹底的にケアすることが重要です。
試合の中では常にさまざまな状況の変化(怪我や退場、ポジション変更)がありますから、90分間考え続けることが大切ですね。
ポジショニングの科学
シュートコースを消す角度の計算とは
身長が大きい・小さいに関わらず、シュートを打たれるときのポジショニングは重要です。自分の立ち位置が10cm違うだけでもシュートを止めることができたり、逆に失点してしまうこともあります。このポジショニングというのは非常に難しく、ボールが常に動いている中で自分自身は前後左右に正しいポジションを取り続けなければいけません。
わかりやすい例は、自分が前に出すぎてしまうとループシュートを決められる。片方のポストに寄ってしまうと逆サイドに決められます。
その中でいかに正しいポジションをとるかというと、一番簡単なことはまずゴールの中心からボールを線でつないでその線上に立ち続けることです。自分が推奨しているのはニアポストを常に観てポジション修正することです。ファーポストを見るには大きく首を振らなければいけないので、必ずニアポストから逆算することを勧めています。ニアポストに寄りすぎればファーサイドが空く・ニアポストから離れすぎればニアを打ち抜かれる可能性が上がってきますので、そこを意識して日々のトレーニングに取り組むことを勧めます。
シュートの角度というものはボールに寄れば寄るほど狭くなっていきます。ただ難しい点としては前に出すぎてしまうとループシュートを決められてしまうということです。前後のポジショニングで重要なのは駆け引きです。相手のトラップが大きくなった瞬間に寄せる・顔が下がっているのを見逃さずそのすきに前に出るなどが重要になってきます。相手選手がミドルシュートが得意なときはわざと低い位置で上を越されないようにしたり、ドリブルが得意な選手がいた場合は常にトラップ際・ドリブルの瞬間を狙うために高いポジションをとるなどが必要になってきますが、そういったことを常に考えながらプレーできれば失点を最小に抑えることができますね。
コーチングという武器
声でチームを動かすGKの司令塔としての役割
最後方のGKは試合の流れやピッチの大部分を見ることができます。ボールに捉われすぎているGKだと目の前の現象しか見えませんが、良いGKであれば常に先のことを考えるためにピッチ全体を把握しています。
90分という時間は長いですが、その中で常に味方に対して声をかけ続けることがいかに重要か、皆様にも理解していただきたいと思います。
GKに比べFPは相手との距離が近く、なかなか視野の確保が難しかったり、常に走っているため苦しい時間が存在します。そのときに見えない部分をGKがサポートし、良いプレーをした味方を励ますことでチーム全体の雰囲気が良くなり、結果的にチームに良い影響を与える場合が多いので、『声を出し続ける』ことにチャレンジしてほしいと思います。
ビルドアップにおけるGKの重要性
現代サッカーで足元が求められる理由
近代サッカーではGKからの配球・ビルドアップが重要視されています。シュートを止めるだけでは不十分で、攻撃の面でいかにチームに貢献できるかという部分がポジション争いで重要になってきます。
相手のFWがDFもしくはGKにプレッシャーをかけてきたとき、そのプレッシャーを無効化できれば数的優位な形でボールを保持・前進することが可能です。そのプレーを実行するためには足元の技術が必要になってきます。
足元の技術というのは、ボールを意図した場所に止める・蹴るということです。さらに言えば、味方・相手を観ることができればなお良いです。人はボールのスピードより速く動くことは不可能なので、相手のプレスを受けない場所を意識しながら速いパスをつなぐことができればボールを支配しながらビルドアップすることができます。
相手のGKがプレッシングに来ることはないので、相手チーム10人に対して自分を含めた11人でビルドアップすることができれば、理論的にはフリーな選手が1名はいることになります。GKの攻撃参加は必須と言えるでしょう。
鹿島で叩き込まれた戦術眼
チームの哲学がGKの動きに与える影響
鹿島には『誠実・献身・尊重』というチームスローガンがあります。何事に対しても誠実に取り組む姿勢・チームのためには自身の犠牲もいとわない献身性。立場は違えど常に相手方を尊重するという考え方です。
特に『献身』という部分はGKに当てはまることが多いと思います。自分は高校3年生のときに接触プレーで骨折した経験がありますが、チームの勝利のためには必要なプレーでしたし、結果的にチームが勝利したので後悔などはありません。
フィジカルコンタクトは怖いですが、チームのために体を張らなければいけない場面も必ず存在します。どんなときでも自分がゴールを守り切るという覚悟・責任感を持っていることがGKを務めるうえで重要なことだと学びました。

